「猿蟹合戦」の演じ方
日本の昔話の中でも特に有名で、子どもたちにも人気のある「さるかに合戦」。
「因果応報」や「協力」といった少し難しいテーマも含まれていますが、パネルシアターなら、歌やコミカルな動きを交えて楽しく演じることができますよ。
ちょっぴりドキドキする場面もありますが、最後はみんなで力を合わせて悪いお猿さんを懲らしめる爽快感を、子どもたちと一緒に味わいましょう!
あらすじ
おにぎりを持っていたカニは、ズル賢い猿に騙されて、柿の種とおにぎりを交換してしまいます。カニが大切に育てた柿の木に実がなると、またしても猿が現れて柿を独り占め。そればかりか、青くて硬い柿を投げつけられ、カニは大怪我をしてしまいます。
そこへ集まったのは、クリ、ハチ、牛の糞、そして重たいウス。怒った仲間たちは、カニの敵を討つために、猿の家で待ち伏せをして……。
ストーリーの流れ
昔々あるところに、カニと猿がいました。
ある日、カニがおにぎりを持って歩いていると、柿の種を持った猿がやってきました。
猿は「そのおにぎりと、この柿の種を交換しないか?」と言います。
カニが「おにぎりの方がいいよ」と断ると、猿は「おにぎりは食べたらなくなるけど、柿の種を植えれば、木になってたくさんの柿が食べられるよ」とそそのかします。
すっかりその気になったカニは、おにぎりと柿の種を交換しました。猿はおにぎりをパクパク食べてしまい、あっという間になくなってしまいました。
カニは家に帰ると、さっそく庭に柿の種を植えました。
毎日水をやりながら、歌を歌います。
「早く芽を出せ 柿の種〜 出さぬとハサミで ちょん切るぞ〜♪」
すると、あっという間に芽が出て、木が大きくなり、たくさんの赤い柿が実りました。
カニは喜びましたが、木が高くて登れません。そこへ、あの猿がやってきました。
「おや、うまそうな柿だな。俺が代わりに取ってやろう」
猿はスルスルと木に登ると、自分ばかりムシャムシャと赤い柿を食べ始めました。
「猿さん、私にも投げておくれよ」とカニが頼むと、
「うるさいな、これでも食らえ!」
猿はまだ青くて硬い柿を、思い切りカニに投げつけました。
「痛い!」
カニは硬い柿をぶつけられ、甲羅が割れて大怪我をしてしまいました(※ここでカニが死んでしまうパターンもありますが、怪我で寝込む設定の方が乳幼児には適しています)。猿は笑いながら逃げていきました。
カニが泣いていると、栗(クリ)がやってきました。
「カニさん、どうしたの?」
事情を聞いたクリは怒りました。「なんてひどい猿だ!僕が敵を討ってやる!」
そこへ、ハチ、牛の糞(または昆布)、大きなウスも集まってきました。
「よし、みんなで猿を懲らしめに行こう!」
仲間たちは猿の家に先回りして、隠れることにしました。
クリは囲炉裏(いろり)の中に。
ハチは水桶(みずおけ)の中に。
牛の糞は土間(入り口)に。
ウスは屋根の上に。
しばらくして、猿が帰ってきました。「あー寒い寒い」と囲炉裏に当たろうとした瞬間……
「パチーン!」
熱くなったクリが弾けて、猿のお尻を直撃しました!
「あちち!お尻が火事だ!」
猿が慌てて水をかけようと水桶に近づくと……
「チクリ!」
隠れていたハチが、猿の鼻を刺しました!
「痛い!助けてくれ〜!」
猿が慌てて外へ逃げようとすると……
「ツルッ!」
牛の糞を踏んで、ステーンと転んでしまいました。
そして最後に、屋根の上から……
「ドスーーーン!!」
重たいウスが、猿の上に落ちてきました。
「参りました〜!ごめんなさい〜!」
猿は涙を流して謝りました。
カニと仲間たちは「もう二度と悪いことをしちゃだめだよ」と猿を許してあげました。
こうして、猿は心を入れ替え、みんなと仲良く暮らしましたとさ。
劇遊び台本・セリフ
ナレーター
むかしむかしあるところに、優しいカニさんとちょっと困ったさるくんがいました
カニ
「あ!こんなところに大きなおにぎりがある!
おうちに持って帰って家族みんなで分けて食べよう!」
ナレーター
そこへ、さるくんがやってきました。
サル
「ねぇかにさん、その大きなおにぎり美味しそうだね。
見てるだけでお腹が空いてきたよ〜
僕にくれないかい?」
カニ
「これは家族みんなで食べるんだよ。
あげられないんだ。」
サル
「だったら、この柿の種と交換してくれない?
おにぎりは食べたら無くなっちゃうけど、
柿は育てればお腹いっぱい食べられるよ!」
カニ
「確かにそうだね!それなら、交換しよう!」
ナレーター
早速かには、さるくんからもらった柿の種を大切に植えました。
カニ
「早く芽を出せ柿の種、出ないとハサミでちょん切るぞ♪」
ナレーター
ニョキニョキニョキ〜、ぽこん!
ぽこん!ぽこん!…
柿の種は大きな木になり、たくさんの布ができました。
カニ
「わーい!これでお腹いっぱい食べられるぞ〜!
よいしょよいしょ(すとーん)
よいしょよいしょ(すとーん)」
ナレーター
小さなかにさんは木に登ることができません。そこへさるくんがやってきました。
サル
「お〜!すごいね。
こんなにたくさんの柿ができたのか〜!」
(スルスルスル〜…)
ナレーター
さるは素早く木を登ると、ぱくん!ぱくん!と柿を食べてしまいました。
カニ
「待ってさるくん、それは僕が家族と食べる分だよ!」
サル
「うるさいな〜!
じゃあ、これでも食べてみな?」
ナレーター
さるくんは青くて硬い柿をかにさんに投げつけました。
カニ
「いたたたたた!えーんえーん><」
ナレーター
そこへお友達の「くりくん」と「はちさん」と
「うすどん」と「うんちくん」がかけつけてきました。
ハチ
「さるくんひどいよ!許せない!」
うす
「みんなでさる君を懲らしめよう!」
うんちくん
「そうしよう!!」
ゴニョゴニョゴニョ…
ナレーター
みんなで作戦会議をして、さるのお家へ行くことにしました。
クリ
「さるくんが帰ってくる前に、僕は囲炉裏の中に隠れよう」
ハチ
「私は、みずおけの中に」
うす
「おいらは、屋根の上に」
うんちくん
「ぼくは臭いから、おうちの前にいようかな」
ナレーター
するとさるくんが帰ってきました。
さる
「ふう、今日は寒いなあ。囲炉裏で温まろう」
ナレーター
その時!
クリ
「パチン!」
ナレーター
囲炉裏の中からくりがはじけて、さるの顔に飛んでいきました。
さる
「あちちちち…!!!」
ナレーター
水で冷やそうと水おけをくと、
ハチ
「ちくん!!」
ナレーター
今度はハチがさるを刺しました。
サル
「あいたたた…!はちだ!逃げなきゃ!!うわぁっ!」
ナレーター
お次は家の前にいたうんちに滑ってすってんころりん。そして、
うす
「どっすーん!!」
ナレーター
最後は屋根からうすが降ってきて、さるのうえに落ちました。
さる
「ごめんなさい!!もうこれ以上悪いことはしないから!!><」
ナレーター
そして、さるは本当に悪さをしなくなったんだって。めでたしめでたし
「さるかに合戦」を演じる際のコツ
悪役になりきって盛り上げよう
お猿さんの「意地悪さ」を少し大げさに演じることで、後の「懲らしめる」シーンのカタルシス(スカッとする感覚)が大きくなります。「しめしめ…」といった表情や声色を工夫してみましょう。
歌のシーンは子どもたちと一緒に
「はーやく芽をだせ〜」の歌は、とても覚えやすいメロディとリズムです。子どもたちにも手拍子を促したり、「ちょん切るぞ〜」のところで一緒にチョキの手をしたりして、参加型にすると一体感が生まれます。
擬音語(オノマトペ)を効果的に
「パチーン!」「チクリッ!」「ツルッ!」「ドッスーン!」という復讐シーンの擬音は、動きに合わせて大きくはっきりと言うのがポイントです。テンポよく畳み掛けることで、劇のクライマックスが盛り上がります。
「間」を大切に
お猿さんがカニさんに青い柿を投げるシーンは、少し「間」を取って緊張感を持たせると、子どもたちが物語に引き込まれます。「かわいそう!」という感情を引き出す大切な場面です。
「さるかに合戦」を演じる際の注意点
暴力表現に注意!
昔話あるあるですが、描写がちょっと残酷だったり痛々しい部分もあります。
カニさんが怪我をするシーンや、お猿さんがやられるシーンは、あまりリアルに痛々しく演じすぎないようにしましょう。「こらしめる」というコミカルなニュアンスを大切にし、暴力を推奨しているわけではないことを雰囲気で伝えます。
柿の木の配置に注意!
木が成長する仕掛けを使う場合、子どもたちから見えやすい位置で、スムーズに成長させられるように練習しておきましょう。
「さるかに合戦」を演じる時の年齢別アレンジ
0歳~1歳向けのアレンジ
「にこにこ」「ぷんぷん」など感情を顔お面で分かりやすく表現し、ストーリーよりも「歌」と「いないいないばあ」的な木の成長の変化を楽しみましょう。
2歳~3歳向けのアレンジ
「ちょん切るぞ〜」の歌の繰り返しを一緒に楽しみましょう。お猿さんをこらしめるシーンでは「がんばれー!」と応援を求めると盛り上がります。
4歳~5歳向けのアレンジ
お猿さんの気持ち、カニさんの気持ち、それぞれの立場で「どう思ったかな?」と問いかけながら進めることで、心情理解を深めることができます。
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